ターゲットが部屋の入ってきたあともしばらく気配を消していた。
ターゲットが部屋にいたにおいを残す。
その議員は物思いにふけりながらビールを飲んでいる。
しばらくしてビールが空になった。
彼はアタッシュケースから小さな筒を取り出し、キャップをはずす。
中には液体を塗った針が仕込んである。
気配を消したままターゲットに忍び寄り、首筋に筒をあて小さなボタンを押す。
針がささった瞬間、ターゲットが振り向き何か言おうとした。
しかし、あっという間に意識を失う。
すばやく、倒れこまないようにターゲットの頭を抱える。余計な外傷は不要だ。
脈を調べる。しっかりしている。
OK
針の先に塗ってあるのは特殊な薬だった。
南米アマゾンの奥地で取れる植物から抽出したもので、命を奪わずに一瞬に気を失わせることができる。
そして、体内に薬物の痕跡を残さない。
彼独自のコネクションで手に入れたもので、他に使っているものはいない、全く無名の薬だった。
ターゲットを抱えたまま、すばやくドアの下に移動させる。
そして手ぬぐいを首に巻き、ノブにつるした。
痙攣がおさまり、絶命したことを確認すると、彼はリビングに戻る。
そして数枚の紙を取り出した。
もう一度さっと目を通す。
いつもながらLBの仕事は完璧だった。
事前に入手しておいたターゲットの筆跡を独自のソフトで解析し、
筆圧まで再現する装置を作って書き上げたものだ。
ペン、紙も調べておいたターゲットのものと同じ。
完璧な遺書だった。
最後に遺体に目礼する。
明日には議員の自殺がショッキングな事件として新聞やテレビを賑わすだろう。
ただ、個人的な感情は全くない。
LBにメールをする。
『END』
どこかに潜んでいるLBが宿舎内の監視カメラを操作し数分だけ彼を invisible にしてくれる。
そっと部屋を出ると、階段をおり玄関から宿舎を後にした。
その後はいつもの方法で現場を離れる。
地下鉄をランダムに数本乗り継ぐ、
大型百貨店の化粧室でカジュアルだがやはり目立たないジャケットとチノパンに履き替えた。
さらに徒歩と再び地下鉄を乗り換え、普通なら1時間しない郊外の自分の家にたどり着いたのは3時間後だった。
自分の部屋に入りパソコンを立ち上げる。
依頼もすべてメールでやっている。
さまざまな箇所を中継するようにし、この部屋にはたどり着けないよう、LBがうまくやってくれていた。
今回の依頼者に結果を打った。これで残りの半金が送金されてくる。
『 fin R 』