「・・・でもね、リュウイチさん」
今日で3度目だった。
3年ぶりにシャーロットと会ったあの日以来、何となくこの店に特別な思い入れ・・・というか、親しみを覚え、つい立ち寄るようになっていた。
カウンターの背もたれが普通の店よりも高く、しっかりと寄りかかれる事もあってか、ついつい酒の量が増える。
マスターの石井は偶然リュウイチと同い歳で、2度目の時から気安く会話が出来るようになった事もリュウイチを1人で今日も立ち寄らせる一因になっているかもしれない。
「リュウイチさんとこの間の女性に何があったのか、私は知らないし、知ろうとも思わないけどね、同い歳のオジサンの負け惜しみだと思って聞いて下さい。
私は貴方の生き方を応援しますよ。できる事なら、ずっとこのまま楽しく暮らして欲しい。私だって同じ様にしたい。・・・でもね、私みたいに考える人は少ないですよ・・・」
普段はあまり自分の事を話したがらないリュウイチだったが、この一見ヤル気のなさそうな同い歳の男の前では、つい自分について多く語る様になっていた。
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リュウイチの後ろのボックスの席で、若いサラリーマンが酔った上司にお説教をされ、背中を丸めて小さくなって謝っている。
「お前が下の者を引っ張ってくれなきゃ困るんだよ!」
・・・言い捨てて、上司はトイレに立った。
トイレの扉が閉まったのを確かめる様に見て、小さな声で
「あんたみたいに役職手当もらってる訳でもないのに、そこまでやれるか・・・っつうの!!」
若者は残った焼酎を一気に飲み干し
「マスター、おかわり!飲まなきゃやってらんないっすよ・・・」
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「ほとんどの人は、ほんのわずかなお金と休暇と安心の代償としてたくさんの嫌な思いとストレスを抱え込んで生きてる。それが当然だって自分に言い聞かせて、なんとか会社や社会に溶け込んで行く。まぁ、それが一番楽な方法でしょうからね・・・でも貴方はそんなちっぽけなお金や安心なんかより人間らしく生きる方を選んだって事でしょ。
でもね、リュウイチさん。それを女性にわかってもらうのは大変だと思いますよ。日本人に限らず、女性は皆”安心”なしでは生きられないでしょうからね・・・」
いい加減、早い時間からお客と一緒になって飲んでいたらしい石井が酔いがまわってきた様にしゃべる。
リュウイチは複雑な思いで石井の話を聞きながら、3年前の女の泣き顔を思い出していた。
「・・・・・シャーロット・・・・・」
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「え?リュウイチさん、エシャロット?食べるの?」
「いや、何でもない」
酔っぱらった石井のまぬけな一言で現実に戻ったリュウイチの耳にBGMが皮肉に聞こえてきた
♪ Let it be Let it be ・・・ ♪